スライドに映し出された様々なバー、人々、お酒・・・ブランドアンバサダーとしてスパイク氏がその目で捉えてきた世界各国の膨大な知識の断片を通して、いまや世界のいたるところにレベルの高いバーが存在することを認識するセミナーの参加者たち。氏はそこで「今こそバーテンディング第2の黄金期!」と宣言。自分たちは幸運な時代にあり、クリエイターとしてシェフと対等の立場にあることや、レベルアップのためにナレッジシェアリングを行っているグローバルコミュニティの存在について語り、ともにインスパイアしていこうと参加者たちの奮起を促しました。 グローバルトレンドとして取り上げられたのは、カクテルを中心にバー空間で味わえる満足度の高い経験=トータル・カクテル・エクスペリエンスで、中でもスパイク氏が注目しているのは3つ。1つは作り方や提供の仕方、器類を含めた全てのパフォーマンスでお客様に特別な気分を味わってもらうラグジュアリーサーブ。2つめは、お客様の好みや要望にあわせ、全く新しい発想で期待以上のものを創り上げるパーソナリゼーション。そして3つめに、科学の原理に基づき、化学実験的な手法を取り入れたモラキュラーミクソロジー。これらが世界の最新トレンドとして紹介されました。

ブランドに関する講義は、商品特徴の説明以外に、スパイク氏がスピリッツを作っている現地を訪ねた時の体験談が語られるなど、他では聞けない興味深い内容に。その後、シロックの貴重な2種類の原酒のノージングからテイスティングへ。シングルトンでは、樽の木片を実際に焦がし、その香りを嗅ぐといった体験も。また、自分自身が感じること、それを自分で表現することの重要性を強調。自分が感じたことを信じることが大切で、そこから湧いたインスピレーションが新しい発想に結びつくと訴えかけました。

お客様の興味をどう惹きつけ、愉しませるか。プレゼンテーションはとても重要な要素。英国のティータイムを題材にしたスイートなシングルトン マンハッタン ゴールド(SINGLETON MANHATTAN GOLD)。グラスはチョコレートリキュールと砕いたビスケットのスノースタイル。ガラス製のティーポットでビルド、ステアしたものを紅茶用ストレーナーを使ってグラスに注ぐ。また、日本で行われることを意識して創られたシロック オリジナル シン(CIROC ORIGINAL SIN)も紹介。日本酒とフランス産のシロックウォッカを合わせ、さらに八角とアブサンで香りづけした東西融合を試みたもの。日本酒のサーバーとお猪口や枡を使うなど、随所に魅せるための特別なこだわりが見られました。


タブーを恐れない、素材の組み合わせの新たな挑戦が大事。人気のモヒートをヒントに、ストレート・ロックが主流のスコッチウイスキーをラムの代わりに使ったシングルトン マイティ モルティ ミンティ ミュール(SINGLETON MIGHTY MALTY MINTY MULE)。また、地元色、テーマ性を持つことがお客様の理解を助けるとし、チリペッパー、コーヒー、チョコレートなどのメキシコを代表するフレイバーと組み合わせたドン・フリオ エル マッチョ ヴィエホ (Don Julio EL MACHO VIEJO)を紹介。スピリッツのフレイバーを考えるときは、同じ系統のものを積み重ねていくか、まったく正反対なものを合わせるといいとアドバイスがありました。
アルギン酸ナトリウムと塩化カルシウムの化学反応を利用し、注射器で作ったメロンリキュールとハチミツのパールズ。これをシャンパンの泡に浮かび上がらせたCIROC ROYALを、モラキュラーミクソロジーの代表的カクテルとして披露。口の中ではじける2種類のパールズが生む新しい食感と味わいを参加者も体験。もう1つのモラキュラーテクニックとして、チェリージュースとリキュールを使ったマラスキーノフォームも取り上げました。
『ディアジオ ワールドクラス カクテルコンペティション 2009』の総合司会。1990年代、当時のロンドンバー・シーンに多大な影響を与えたアトランティック・バー&グリル(Atlantic Bar&Grill)のオープニングマネジメントとして頭角を現す。その後モンド(Mond)、ツーフロアーズ(Two Floors)といった有名店を手がけ、自身でもアルファベット・バー(Alphabet Bar)、アンバー(Amber)をオープンするなど、カクテル文化に常に変革をもたらしてきたニューウェーブの旗手。現在は数々のアルコールメーカーのコンサルタント、インストラクターとしても活躍。ここ数年はディアジオのブランド訴求、カクテル、スピリッツの啓蒙活動へ精力的に力を注いでいる。